弱視について
弱視は視力の発達期において、正常な視覚刺激を経験しないことや視覚刺激のアンバランスにより生じる片眼または両眼の視力障害のことを指します。原則的に眼球自体に異常は認められません。弱視は視力の発達に重要な時期である臨界期(感受性期=10歳頃まで)を過ぎると治療に対する反応が低下することが知られています。
屈折異常弱視
屈折異常弱視とは、両眼の屈折異常(遠視、強度近視、乱視)による両眼の視力障害です。を意味します。このいずれでも屈折異常弱視を発症しますが、遠視による場合が多くみられます。近視では眼鏡をかけなくても近くの物を見るときにピントが合うため、近視による屈折異常弱視は非常にまれです。
小児では調節麻痺薬を点眼して、屈折異常の程度を検査し、この屈折異常を矯正する眼鏡を装用します。
不同視弱視
不同視とは、左右眼の屈折度数の差が2D以上のことです。不同視弱視とは不同視があり、屈折異常が強い方の眼の視力障害を言います。遠視の不同視によく見られます。片眼の視力低下なのであまり自覚症状がないことも少なくなく、3歳児健診や就学時健診でみつかるケースが多いです。小児では調節麻痺薬を点眼して屈折異常の程度を検査し、この屈折異常を矯正するために眼鏡を装用します。眼競装用だけで、弱視眼の視力の改善が思わしくない場合は、アイパッチといって視力の良い方の眼を遮閉し、弱視の眼を積極的に使う時間を設ける訓練を行います。アトロピンという薬剤を健眼に点眼する治療もあります。視力の左右差がなくなり、安定して視力が維持できれば、健眼遮閉は終了となります。
斜視弱視
斜視弱視とは、斜視があるために常にずれている方の眼に起こる片眼性の視力障害です。
固視異常があれば、固視矯正のために健眼遮閉を行います。固視が正常になれば、視力を上げるためにさらに健眼遮閉、薬剤(アトロピン)の点眼や斜視手術を行うことがあります。
形態覚遮断弱視
形態覚遮断弱視とは、乳幼児期に先天白内障や眼瞼下垂などで眼が隠され、視性刺激が遮断されることによって、非可逆的視力低下をきたしたものです。視覚の感受性期間内に先天白内障、眼窩腫瘍、眼瞼腫瘍、角膜混濁、高度の眼瞼下垂、眼帯装用などがあるとおこります。
治療は、原因疾患をできるだけ取り除くことが第一です。先天白内障では水晶体の混濁の程度に応じて、水晶体摘出手術が行われます。さらに、健眼遮閉などの弱視治療が行われます。
心因性視力障害
心理的な原因によって引き起こされる視機能の異常で、眼には器質的疾患を認めません。視機能の異常としては視力低下のほかに視野異常などをみとめることもあります。発症は7歳~12歳の女児に多く、男児の約2倍と言われています。
心理的ストレス(精神的葛藤、欲求不満)が原因で、家庭環境での親との関係や、学校での友人や先生との関係があげられます。我慢していることをうまく表現できず心理的ストレスになることが考えられます。また眼鏡を装用したいという思いで心因性の視力低下をみとめることもあります。背景となる原因がわからない場合もあります。
治療は、まず原因となっている心理的ストレスを取り除くことが第一の治療となります。そのためには家族を含めた周囲の人々の理解と協力が必要となります。しかしながら症状の改善を認めない場合は心療内科や(小児)精神科の受診が必要となることがあります。